桜丘高校の入学式。合田美桜と芹沢春輝は桜の樹の下で出会う。「美しい桜って書いて、美桜」 「俺は春輝。春が輝く」 春生まれの二人は親近感を覚える。それ以来、気づいたらお互い目で追うようになっていた。美術部の美桜は大人しく、映画研究部の春輝は快活で周りにはいつも誰かがいた。二人は全く違うタイプだが、いつの間にか一緒に下校する仲になっていた。付き合っていると勘違いされることもあるが、ずっと友達以上恋人未満の関係。本当はお互いに「好き」という気持ちを抱えながらーー。いつも帰り道に寄る高台の階段に腰をかける二人。「春輝君って、好きな人とか、いる?」 思わず聞いてしまった美桜に答える春輝。「好きなやつ、いるよ。…美桜は?」 二人のその手の距離は10センチ。たった10センチなのに、その距離が縮まらないーー。