四万十川に面した小さな食料品店、山本商店では、主の秀男(小林薫)が突然出稼ぎ先で大ケガをして入院した。母親のスミ(樋口可南子)は、5人兄弟の子供たちを養うので手いっぱい。子供たちの面倒は、もっぱら長女の朝子(高橋かおり)の仕事になった。朝子はできることなら家族のためにも家を出て町で働くことを望んでいた。次男の篤義(山田哲平)は、身重のメス猫、キイのことが気になってしょうがない。スミが食料品店では、猫を2匹以上飼わないことを篤義に予告していたからだ。夏休みも近い頃、学校で小さな事件が起った。篤義のクラスの子の鉛筆削りがなくなったのだ。クラスの疑いはいじめられっ子の千代子(小島幸子)に集中した。篤義は、予てから千代子の姿に貧しかった頃の姉、朝子をみていた。篤義は千代子を庇って、自分が盗んだと言い出した―――。二学期が始まった。千代子は町に引っ越していった。そして、朝子も町に出ようとしていた。篤義の心の中にあらたなる葛藤が起こり始めた。どっしりとした四万十川の流れがそんな彼を静かに見守っていた……。