1972年ある冬の夜、日本海の某海岸に男達が日本に侵入を果たす。沖合の工作船、東京の秘密のアジト、すでに日本には多数の北朝鮮工作員が活動していた。1977年11月15日夕刻、部活の帰り道で一人の少女が忽然と姿を消した。横田めぐみさん(13歳)である。大規模な捜索にもかかわらず、警察の捜査は行き詰まりをみせる。めぐみは暗くみじめな工作船の船底で目を醒ます。必死に声を上げ、閉ざされた扉をこじ開けようと手を血だらけにするが無駄だった。1970年代の同じ頃、日本各地で行方不明事件が多発していた。90年代、日本国内では北朝鮮による拉致被害の全貌が明らかになってきていたが、一般市民の関心はまだ薄い。現在、北朝鮮をめぐる状勢は激しさを増すばかりで武力衝突の様相すら呈してきた。拉致された人々に向けて発せられている北朝鮮向け日本語短波放送「しおかぜ」に母親早紀江の声が流れる。海を越え、空を越え、その放送に聴き入る者がいた・・・。